深夜食堂の著者のデビュー作シリーズ。耳かき店の和装の美人女性店主の客人の人間模様が描かれています。
「山本耳かき店」は昔ながらの耳掻き棒の販売と、女主人がその棒を使ってお客に耳かきをするというお店。耳掻き屋がメインの舞台ですが女主人は物語の上では一歩引いた立ち位置であり、主として描かれるのは客たちのドラマです。
とはいえこの話の目玉はやっぱり女主人がお客に耳かきを行うシーンかなあとも。卓越した耳掻き技術に老若男女問わず、思わず恍惚とした声をあげてしまうお客たち。女主人の耳掻きの仕上げの動作がまた色っぽいのです(笑)
耳掻きのシーンではその気持ちよさの表現に三半規管や脳みそを使っているあたりに妙なリアリティがありました。確かに耳は脳に近いし原始に近い感覚を直に拾いやすいよなあ。
客観的に見れば大仰な出来事ではないけど当人にとっては電撃が走った感覚を覚える時の描写とか、まったりと快感を拾っていく描写とか、そこはかとなく色めいた雰囲気が印象的。
しかし蚊のエピソードはびっくりしたなあ。
安倍夜郎
ビッグコミックススペシャル全1巻 / 小学館
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★★
ちなみに同名の耳かき店が実在しますが完全に別物。というか、この漫画が雑誌に発表されたあとに実在の店が開店したようです。あとがきにもありますが、著者は、著者側がぱくりと思われることをかなり懸念していた模様。