イヌジニン -犬神人- 室井大資

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現代社会の営みの中で気が淀みその均衡が崩れたときに生まれる「怪(け)」を鎮め処理する組織がある。組織を構成する異能力を持つ人間たちと彼らと関わる人たちの物語。
怪とは警察や宗教、その他どの機関でも手に負えなくなった奇怪なものを指し、それを処理するのが主人公たちの役目。
主人公をはじめとする怪と対峙する面々が所属する組織は、呪術・死体処理・暗殺といった汚れ仕事を一手に担う神社を由来とする。彼らは単独ではなく集団で1つの怪に挑む。怪を見る眼、怪の意図を感じ取る耳、行動を先読みする頭とそれを伝える声、そして実際に怪をたたく手という各々の能力にあった役割を務めるという設定。
基本はゴーストバスターアクションだと思いますが、物語の根幹は怪を通した人間ドラマがメイン。異能力を持つゆえ行動が制限されなければ仲間すら脅かすことになる存在、仕事の過程で起こる一般人との衝突、事件が起こったその意味。どれもこれも人間の営みのうえで起こりうるであろう事象と見られるものばかりで、やるせないと感じるシーンもしばしば。特殊な設定なのに、人間描写がつくりものっぽくないというかリアルだと感じるというか。
奇異で派手ではない退魔描写と、心に響く人間描写のバランス配置、物語に引き込む構成が見事。オカルト系が苦手でなければ読み応えのあるタイトル。

室井大資
怪コミックス1巻 / 角川書店
ジャンル:ホラー・アクション / 好み度:★★★★★