欧州で著名な調律師の青年手嶋織斗は、疎遠だった父が死んだことを従妹から知る。帰国した青年は、父が経営していた田舎の喫茶店のオーナーになりその地で調律の仕事を始めることに。ピアノ調律を介したヒューマンドラマ。
主人公は欧州では実力のある調律師だったが、ある日父の訃報を聞き日本に帰国する。両親はかけおち同然で結婚したがやがて離婚。主人公はその理由を知らず母の行方もわからず何も語らない父に反発していた経緯があり、父が死んだ悲しみもあるけれど事実を伝えられなかった憔悴を深める。鍵がかかっていた母のピアノを開くと母が父へあてた手紙があり、父の思いや母の消息を知るため田舎町に腰をすえることを決めた主人公、という展開。
亡き父と不在の母、父の変わりに会社社長を勤める叔母とその娘で従妹の女性、亡き父を慕う喫茶店従業員の男性など身内のドラマと、ピアノの調律を介して知り合う人々との物語が主軸かな。両親に関しては主人公が知らされていない謎もあるようで。
崩れかけた関係や状況や心情を立て直すドラマと、音がうまく鳴らないピアノの調律という行為を、修復再生というテーマで懸けているというところか。
大げさな表現も陳腐な台詞の少なくリアリティのある堅実な内容。主人公が行うピアノ調律の描写も含蓄がありました。ピアノって繊細で緻密な楽器だなあとしみじみ。いや楽器はほとんどそうなんですが。
原作:イタバシマサヒロ / 漫画:有留杏一
フラワーコミックスα全2巻 / 小学館
ジャンル:女性・ドラマ / 好み度:★★★☆☆
そういや主人公の従妹で主人公に好意を持っている女性、女性漫画ではあまり見ないタイプかも。物語における立ち位置から見てもちと違和感が。原作が男性だからかなと偏見なことを思ってしまう(女性だったらすいません)