舞台である東京都渋谷区春山町は渋谷の端ののどかな町。生まれたときから町で育ち、町内の区役所出張所の公務員として社会に出ることになった女性が主人公。
主人公は意気揚々と職場に赴くが彼女に割り当てられた仕事は、主張所が発行する町の情報誌の編集長だった。素人同然の主人公は新聞作成のために四苦八苦しながら町を巡る過程で、町の様子や住人の暮らしなどが綴られていく。主人公も地元の人間なので顔見知りは多くまた初対面でもなにかしら縁があるかんじで主人公と他者との衝突みたいなものは少なく穏やかに読める。
小説などの挿絵に合いそうなざっくりした絵柄に、牧歌的なようでシュールかつ世知辛くも切ない要素が多分に含まれた不思議な世界観。なんというか主人公を含め妥協とあきらめをそれなりにかみ砕いて生きてるみたいなキャラが多いような気がする。
主人公から見る住人の描写やその気質や状況にフォーカスする一方で主人公自身の状況も見えてくる。どうも主人公の父はそれなりに名の売れた小説家で三部作の最終シリーズが未発行のままになっているという設定が物語の大きな伏線となっている模様。
独特の作風、茫洋と展開させているようできっちりとした構成。知らず引き込まれる内容だった。
朝倉世界一
ビームコミックス全4巻 / エンターブレイン
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆