サルチネス 古谷実

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世間的にはいわゆるニートの青年は、中二もしくは哲学的な思考を重ねつつ後ろ向きな気質ではなく根拠があるんだかないんだかなポジティブさを持つキャラ。
関東甲信越の田舎町で、妹と祖父の3人暮らしだったが、祖父から、妹が兄である自分が結婚しないと自分もできないと言っていたと告げられ、最愛の妹の幸せの障害が自分自身であったことにショックを受ける。そして障害となってはならぬと彼は東京に出ることに。
主人公が出て行った後、実は妹はまだ結婚する気がないだけでやるときゃやるというかんじで、祖父の発言は完全に余計なことだったわけだが、その後の妹の兄への発言は兄のことを良くわかってるなあと感じる。
で、上京した主人公は、案の定出会った人たちにタチの悪い迷惑をかけていくことになるわけだが、一般的にむちゃくちゃでも当人にとっては整然とした理屈を滔々と語る主人公に引きづられていく展開がある意味リアル。
主人公の荒唐無稽な行動と、自活を目指すもののその方向性がずれまくっているグダグダっぷりを読む内容か。働きたくないから人から助けを借りようという図々しさが清清しくみえるマジックがすごい。カリスマ性のある人間ってのは往々にしてこういうタイプなのかもしれない。
正直、面白いとは決して感じないが一刀両断につまらないとも言い切れない内容。それはこの主人公の行動と周囲の反応の描写とシンクロしている気もする。

古谷実
ヤンマガKC全4巻 / 講談社
ジャンル:青年 / 好み度:★★★☆☆