主人公斡旋所に集うまだつくられていない物語の主人公たちの中のひとりの少女を描いた表題作ほか、きょうはなんの日・茉莉花にくちなし・亘理くんとふれたならを収録した短編集。
きょうはなんの日
バレンタインにずっと片想いしていた相手にチョコを渡し、期待を込めてホワイトデーを迎えた少女の話。ページ数的にも構成的にも、ある思春期の少女のヒトコマといったかんじ。強気な気質だけど恋愛となるとつっぱしれない主人公の、心情描写とか間合いとか、じんとくる秀逸さ。
茉莉花にくちなし
かつて美しく人気者でもあった幽霊の少女と、彼女とは正反対の地味でいじめられれっこな女子のお話。幽霊の少女が女子にとり付き、幽霊の少女と近しい男子を絡めて、真逆の性質を持つ他者の心を垣間見ることによって話が進んでいく。すでに死者なのに生きる活力が強いと言う描写が印象的。
亘理くんとふれたなら
帰国子女の天才少年と同居することになる平凡な主人公は、なかなか打ち解けられず・・。いわゆる同居もので、これ以上になく少女漫画の定番な展開。柔らかい気持ちになる内容でした。
もう卵は殺さない
表題作。SFというかファンタジーというかな特殊な舞台設定。主人公の少女がいるのは、まだ作られていない物語においての主人公たちが集まる主人公斡旋所。自分の物語は崇高であると自負しているが、なかなか斡旋所から出られない、つまるところ売れ残り的な立ち位置らしい。物語の主人公キャラと現実世界の著者の2つの視点が出てくる構成。
なかなかにシビアというかせつないというか。構成も珍しく創作というテーマから著者にとってメッセージ性が強い物語なのかなあとも。
香魚子
マーガレットコミックス全1巻 / 小学館
ジャンル:少女 / 好み度:★★★★☆