女マタギは山の怒りを鎮めるため、山で愚行を犯す人間を粛清する。濃厚な人間ドラマを込めた本格ホラーアクション。
村の因習に従い実母を山に置く孝行の次男が出会ったのはマタギの少女。いわゆる姥捨山をモチーフにしたエピソードから物語は始まります。姥捨は信仰に基づくものと信じていた息子は真逆の驚愕の事実を知り母親を助けようとし、少女は非道な人間を粛清するために銃を放つ。
短いエピソードの連続といった構成で、マタギの少女は狂言回しで彼女に関わった人間のドラマが主軸という内容かな。貧しい暮らしの農民が多くいる時代設定で、濃密かつ容赦のない人間模様が展開されています。アクションシーンがグロいというか迫力ありすぎてちとびっくりした。
それなりに道が開けるラストもあれば、どこまでも報われないラストや鬱展開もあり、エピソードによってラストの明暗の差があるあたり余計に物語にリアリティを感じる次第。
マタギの少女の山の怒りという名の客観的な視点と当事者たちの感情の吐露の差異も見所か。モノローグを多用せず人物のやりとりや表情のみの描写で多くを語る著者の力量はさすが。
雑誌休刊に伴い移籍、題名を「ツバキ」に変更しての続編があります。
元々1話完結形式で主人公のバックボーンは語られていなかった状態だったのであまり混乱なく引き継がれている模様。ツバキ1巻目はぶんか社で掲載された分も収録されています。
押切蓮介
椿鬼 / ぶんか社コミックスホラーM1巻 / ぶんか社
ツバキ / シリウス講談社コミックス全3巻 / 講談社
ジャンル:少年・アクション・ドラマ / 好み度:★★★☆☆