職を探していた青年は、ひょんなことから巨大な迷路のような集合居住地・百窟城の管理人を任されることになる。百窟城を舞台とした住人たちのヒューマンドラマ。
田舎から出てきて職を探すも資格も技術も持たぬゆえになかなか職にありつけない青年は、ひょんなことで出会った女性に集合居住地・百窟城の管理人をやらないかと持ちかけられる。
アイスクリーム屋の少女・タオをはじめ、主人公の青年の視点から描かれる住居人たちの、時にやさしく時に苦い人間模様が淡々とした雰囲気で描かれている作品。
舞台となる百窟城は、フリーダムに増築を繰り返した末迷路のようになっている集合住宅地で、いわゆるスラム化した場所ともいえる。世界観というか風俗・文化は返還前の香港、舞台となる居住地は九龍城がモデルなんだろうな。
職にありつけたと喜ぶ主人公に仕事を斡旋した女性は曲者だという青年やそっけない住人もいたりで、歓迎されていないならまだしもここは主人公のいる場所ではないと匂わせるじんわりとした疎外感とか、主人公に移入して読むとどうしてももやっとした気持ちになる伏線があるものの、最終話あたりでそれなりに解消されます。
舞台と設定のためハートフルだけでなくシビアな面もきっちり描いているのはいいのですが、少々消化不良気味な構成と感じる場合があるかも。そのへんの中途半端さはリアリティの高さであり著者の作風でもあり、なのですが。
板倉梓
芳文社コミックス全1巻 / 芳文社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★☆☆