船を建てる 杉山志保

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鯨解体工場で働くタバコとコーヒーをはじめとするアシカたちの世界のおわりまで語られるものがたり。
カンヌでノミネートされる映画のような雰囲気のあるお話。もしくは甘いだけじゃないせつなさとしょっぱさを経験したもののえほん。世界のおわりとは天変地異ではなく自分が自分以外のものとの接触ができなくなること。
登場人物はほとんどアシカをはじめとする動物。黒と白のみで構成された画面が特徴の、どちらかというと雰囲気を読むタイプのタイトル。
夢を持ちつつおだやかな日常を暮らす2人、今は亡き妻の想い出と暮らす老人、希望を胸に新天地に向かう女性、漠然とした現状から確実なものを得ようとする女性たち、彼らの想いと過去と未来。
印象的な詩にのせてキャラの想いが静かに綴られています。ゆるやかで暖かく優しい世界ですが各々綴られるキャラのドラマは心情描写は胸が締め付けられるような感覚を覚え、感極まって涙が出てしまいます。
エピソード自体は他の媒体でも見られる割とありふれた話ばかりなのに卓越された情景描写と画面構成で泣けてしまうって。著者だけのものであろうこの感性には脱帽するしか。
個人的になんとなく涙を出したいなあと漠然と思ったときに読んでいるタイトル。どんな精神状態でも読むと心が沈まず涙が出るんですよね・・。

鈴木志保
秋田書店全2巻 / 秋田書店
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★★