補助隊モズクス 高田築

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主人公のサラリーマンは宿泊したホテルの部屋でぼうっとしていたところ、突如壁から出てきた奇妙な3人の小人と遭遇し、彼らがねだるままに指切りを交わす。それは彼らとの契約の証しであり、主人公は彼らの主となる。小人の前の主はホテルの支配人であり、死亡したことにより主人公が交代した状態になったことをホテル従業員が告げる。そして小人の主たる主人公は、小人を使役して人を喰う怪物の駆除を行わなければならないという。
巻き込まれ型ヒーローものであり、成り立てヒーローの成長物語が主軸なんだろうな。とはいえ新米劣等生というわけでなく、主人公にのみ使えるかなり有効な能力があり、主人公自身も当人の茫洋とした性格に隠れて薄くなっているが無能ではないあたりは「物語の主人公」らしい。
それにしてもほぼ初手から巻き込まれる主人公って今まで読んだ中でも巻き込まれ最速なんじゃなかろうかと思った。読み手側もほぼ主人公目線なので、目の前の状況が把握しきれないまま事態が切羽詰まっていく描写に臨場感をひしと感じる。帯にもあるがまさにへっぴり腰とかおっかなびっくりとかという言葉が思い浮かぶ。
それまで自分の周囲のみを視野に入れ生きてきたごくごく小市民な主人公が、自分の前に提示された変化に対する選択と変わる状況に対する心持ちの変化の過程が妙にリアリティがあるというかいろんな意味で人間味あふれているというか。
主人公のような怪物駆除の人間は式神使いと呼ばれ、警察と連携していく場合も多い設定で、先輩に当たる女性や男性、主人公たち式神使いを嫌う警官など次々と登場人物が出てくるが、各々の主張とか当人のドラマとかすっと話に入りやすく、構成が上手いんだなあと感じる。戦闘描写は怪物の性質上、かなりヘビーな絵面が続くが薄味な絵柄ゆえに嫌悪感は少ない。デッサン力が高くて読みやすいし。個人的には人間描写が興味深い。グロ系が全く駄目じゃなければおすすめの作品。

高田築
ビームコミックス全3巻 / エンターブレイン
ジャンル:青年・SFアクション / 好み度:★★★★☆