不可解な事件解決やお祓い等を生業とする「妖しい屋」の一つにグーグー家があったが、家族のほとんどが妖怪に食べられて唯一赤ん坊のチキタだけが生き残った。チキタは別の家に預けられていたが成長したのを機会に自宅へ戻らされてみるとラー・ラム・デラルと名乗る奇妙な人物が出迎える。実はラーはチキタの両親を食べた張本人で、チキタを食べなかったのは死ぬほど不味いからだったという。「不味い人間は100年経つととてもおいしくなるんだ」こうしてチキタとラーの奇妙な日常がはじまったのだった......。
ほのぼのファンタジーっぽいですが生と死、生き物の本質を語った考えさせられる内容になっています。実際、作者の作品には多いんですが。痛々しいエピソードの中には(程度・状況の差はあれど)現実にもあるような内容が多く、それに対する作者の考えが垣間見えます。
重いテーマですが作品の雰囲気は暗いというより、実に淡々としています。自分の信念や強い望みを持ちつつ迷ったり考えたりする中で発せられる的を射たキャラクターの台詞には生きているが故の原罪みたいなものがこめられているような気がします。
妖怪と人間の交流を描いた話は数あれど、この作品はそれらとは一線を画している気がしました。チキタの悟りっぷり、ラーの無邪気さが印象的でした。さりげなく毒の入ったシーンやエピソードが実に効果的に盛り込まれているのも作者の特徴と言えます。一話ごとの終わりの演出もツボ。
TONO
眠れぬ夜の奇妙な話コミックス/全8巻/朝日新聞社
ジャンル:オカルトファンタジー・ドラマ / 好み度:★★★★★
朝日ソノラマが倒産して、親会社から再販した模様。