妖かし恋奇譚 かまたきみこ

Amazon
妖かし恋奇譚をAmazonで見る

妖怪や幽霊といった人外も出てくる江戸時代の恋の物語を綴った短編集。
「人形の魂」「丑三つ演舞場」「スリーピングビューティー」「娘心からくり仕掛け」「消えた花婿」収録。マーメイドシンドロームは西洋風に対し、こちらは日本時代ものというか江戸時代の時代設定の作品集です。といってもストーリーの元ネタがコッペリアとかジゼルとかバレエの演目だったり。昔話風の恋物語、お芝居の演目を見るような雰囲気が特徴か。
寓話をモチーフにしてはいますが実はけっこう現実的な内容という感じでした。というかモチーフが寓話だから現実的な話になっているのか。どろっとした情念が肝になっている愛憎劇・・のはずですが、主人公が前向きというかじめっとした性格ではないからか、ほのぼのというかからっとした印象。著者の他の作品に比べて艶っぽい雰囲気はあるのですが。
人形の魂
髪結い師に恋した文楽の娘人形の話。オチがうまい。髪結い師と相思相愛の女性の江戸っ子(?)ぷりが好きでした。
丑三つ演舞場
初夜を前に死んでしまった娘は死者の娘たちと舞を舞う。死んだ娘と夫の交流が印象的。全体的に軽快というかさばさばした雰囲気でした。
スリーピングビューティー
眠り姫の話。しかし元ネタと違う人間を惑わすホラー的展開というか日本昔話の山姥のような展開に。姫さんが状況を把握しておらず乳母が奮戦ってあたり日本昔話っぽい。ちゃんと救いのある結末だったのもいいな。
娘心からくり仕掛け
常に不満を漏らす商人の娘に寄ってきたものとは。謎のからくり師となじみの青年、不満ばかりの娘、うまく人物をかみ合わせてきれいにまとめられてた結末がよかった。
消えた花婿
輿入れの日に花婿が失踪しいわれのない中傷にさらされることになった娘。祖母にはげまされともに花婿を探すことになったが。これも獣が人を化かす日本昔話っぽい話。不幸を嘆くより打ち破る展開がすがすがしい。

かまたきみこ
ぶんか社コミックス全1巻 / ぶんか社
ジャンル:少女・恋愛・時代 / 好み度:★★★★☆