妖艶で浮世離れした傘職人・詩郎と熱血な正義漢巡査・光路郎が関わる事件を綴った絵巻。
明治・大正を思わせるレトロな文化・社会形態に独特のオリエンタル美術文化設定を加えた世界観。
偽善じゃなくおせっかいで正義感の強い熱血巡査はある事件で傘職人と出会う。それからというもの巡査は眉目秀麗で色香を漂わせる風貌なのはいいが、服装から生活態度からゆるゆるだらしない傘職人の性根を直そうと何かと世話を焼くようになる。そんな2人が難解な事件を解決していくという、バディミステリー。
独特な世界観、事件に関わる人物やその真相に存在する妖艶と残酷さ、極端で激しくマイノリティな価値観が特徴。なのでグロテスクなエピソードも多く見られますが、そう思わせない読みやすい描写が見事です。
基本的に2人が出会った事件エピソードが主ですがその事件には傘職人の過去とそれに関わる人物が裏で絡んでくることもままあり。
バディものとしても楽しめ、人物描写も細やかでかつ読後感の良い構成がいいですね。2人をはじめとする人物同士のやりとりも楽しくテンポが良い。
巡査の、せちがらい世界の中でかなり希少と言える混じりけのないまっすぐな気性がツボでした。あと傘職人の艶やかさもね(笑)
こういう線が多くてキャラが棒みたいな体型の絵柄ってちょっと苦手な人間だったのですが、この著者の作品はいいなあと感じました。絵がきれいなだけじゃなく漫画として読みやすい構図と構成なのが良かったし、人物以外の装飾品や美術品のデザインが秀逸で素晴らしいのです。
読んでみるとなんとなく江戸川乱歩のミステリーを思い出します。乱歩ミステリーよりもさらっとした雰囲気を持つタイトルという感じ。
尚月地
ウィングスコミックス1~ / 新書館
ジャンル:少女 / 好み度:★★★★★おすすめ