見た目憂いのあるイケメンでなんでもソツなくこなすが、他者が自分を見る目に無自覚で恋愛に疎くネガティブとアパシーな性質の青年の恋愛と受難の物語。
主人公の青年は30歳。学生時代から女性が周囲にやってくる見た目儚げで色気のあるイケメン。しかし本人は異性にモテるという自覚がなく、女性に言われるまま感情もなく付き合いそして幻滅され勝手に去っていくことに少なからず憔悴していた。
そんな主人公はふと自分は何も熱中するものがないことに気がつき何か趣味をと手芸屋に行く。紆余曲折の後、手芸屋の孫娘と出会い彼女に手芸を習うことになる。
「うまいこと生きる」から対極の気質を持つ主人公。悪友の奥さんに対する苦手意識が恋の可能性であるとも気づかないが、知り合った手芸屋の女性は主人公の不器用な気質を読み取ってしまうという展開。
主人公の視点で主人公の気質を描き、手芸屋の女性との出会いからは女性の客観的な視点も交えた構成。女性はいまのところ主人公に恋愛感情ではなく保護欲が強く駆り立てられ、不器用すぎる主人公に渇を入れたくなっていくということのよう。
主人公の戸惑いとか彼なりの矜持とか、手芸屋の女性のやきもきする心理描写が、現実味と喜劇性を内包して実に興味深い内容になっていると思います。主人公と悪友とその奥さんの関係の展開もなんとなく気になるなあ。
しかし女性が自分に対する行動の理由について無知かつ無関心すぎる主人公ってありうるのか。疑問とそれなりの憤りはあっただろうけどそれを追求する興味がなかったということか。他者と感情をぶつけあうなどといったこともなく、他者のにしろ自分のにしろ感情や望みを深く追求せず学習しないとこうなるということなのか。あまり見ない主人公のタイプゆえ続きが気になる次第。
河内遙
fxコミックス全5巻 / 太田出版
ジャンル:青年・恋愛・ドラマ / 好み度:★★★★☆