急死した漫画家の代わりに編集・アシスタントが作品を完結させようとするサスペンス。
数々の記録を更新した人気少年漫画「ミリオンジョー」作者は変人で極力人に会わず、作者が指名した担当編集者である主人公は適当で最低限の仕事しかしない人間だった。そのあたりを含めヒット作を巡る人間関係を紹介がてら描かれていく。
だが件のヒット作品が完結間近を迎えたある日、その漫画家が急死する。生前度々胸が苦しいと訴えたたびに主人公は慌てて作者の元に向かってみれば異状がないということが繰り返されたため、初めてその訴えを無視したら本当に死んでしまった。
ヒット作未完のまま作者が急死という状態。主人公は作者の死を隠して、自分とアシスタントなどとともに作品を完結させようとするという展開。主人公は保身のためでも金銭的な理由でもなくきっちり完結させたいという望みのよう。
完結までのプロットが残っていたので漫画制作経験のある主人公がネームを切り、作者の生前からほぼすべてのペン入れをしていたアシスタントが描くため、オリジナルとのあからさまな乖離はない。制作以外では作者の影武者をたてたりもする。
自分たちの所行がバレないための工作を行うある種の犯罪サスペンスのようだが、主題は作者本人不在で作品は本物となり得るのか、もしくは同等の評価を得られるのか、というのが肝のよう。手探りのような作業、この作品のつくりでいいのかという葛藤とかも見所か。人間描写の完成度も高いように思う。
原作:十口了至 漫画:市丸いろは
モーニングKC全3巻 / 講談社
ジャンル:青年・サスペンス / 好み度:★★★☆☆