丸角屋の嫁とり 山中ヒコ

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武家の庶子という出生から、男なのに女として屋敷の中で育てられ、乳母とその孫の男の子と亡くなった母が世界のすべてだった主人公・鈴。数年後、出かけた町中での事件をきっかけに男という存在に憧れを抱き自分もそうありたいと願うようになる。そんな折父の役に立てと借金のカタに町人の嫁入りを命じられる。
で、嫁入り先というのが、主人公が町中で絡まれていたところを助けた町人であり、主人公が男の自覚を持った原因という図式。町人の青年は主人公に心底惚れていて、粋な気質ゆえにせつないところもありといった感じ。
父親の仕打ちに嘆く主人公とか、一度の契りで十分と言ってしまう青年とか、主人公を心配する乳母の孫とか。好きな相手に対するせつなく優しい感情と同時に存在する独占欲だったり自分が知らない相手を見たときの感情描写、もやっとした感情からくる暴走気味な行動がツボでした。
いかにも姫な主人公がちょんまげになったのはまあいいとしてその姿でBLシーンがあったのにはある種の新鮮さを感じました(笑)男の矜持に目覚めた主人公ともっと親密になりたい旦那のやりとりにも萌え(笑)
同時収録の「新しい武器」「吉野が二人の関係に気づいた日の話」はリーマンBL。
過去のトラウマを抱えつつすべてを諦めたようにただ漠然と毎日を送る神田と使えない新人染谷の話。神田の過去もにっちもさっちもいかない暗いですが、一見能天気キャラの染谷の心の闇もなかなかに深くて驚きでした。それゆえに2人のやりとりの描写に深みが出てきているとも言えますが。心の傷に対する防衛方法が真逆の2人・・ともいえるのか。吉野が~は2人の同僚の青年の視点から描かれた短編。客観的に見る主人公2人の描写も奥が深い。

山中ヒコ
ディアプラスコミックス全1巻 / 新書館
ジャンル:ボーイズラブ / 好み度:★★★★☆