菌を認識できる能力を持つ種麹屋の息子は親友の酒蔵の息子と共に農大に入学する。微生物研究の権威の教授や大学の先輩・同輩と共に学ぶ農業キャンパスライフを描いた物語。
菌を愛らしくデフォルメしたキャラクターとかもすぞの決め台詞(?)で一世を風靡したアグリカルチャーコメディ。不可視の菌が見える体質の主人公、主人公の幼馴染、実学を旨とする謎多き教授とそのゼミの先輩たちや同輩の女の子などと共に、酒や味噌などの発酵を中心に学ぶという展開。
主人公のファンタジーな設定を除けばほぼリアルな内容。大学では農業全般を学ぶようですが教授のゼミに入ることからやはり菌や発酵に関するエピソードがメインかな。はじめは教授のマイノリティな発酵食品の制作や長い薀蓄などがありましたがいまのところ大半は酒関係の話が多いですね。
学術的な話のほかに大学ならではのお祭り騒ぎや人間模様も描かれています。実家と軋轢がある先輩の話とか淡い恋模様とか。いろんな人間関係のエピソードがありますが、どれもリアリティのある一定の温度でさらりと描かれているところが印象的でした。
うんちく系とさりげない人間描写がいい感じに融合した堅実な秀作。菌たちがかわいいのもいいな。
まあ個人的にインパクトがあるのはやはり主人公の幼馴染の動向か。ゴスロリのあの人です。幼馴染の主人公に対する心情が、恋っぽいのかと気づいたのはフランス編の終わりでした。周囲から遅いだのそれでもふじょしかと突っ込まれたのもなつかしい思い出(笑)
キャラクター化した菌たちの絵本も発行されています。まっとうなこどもむけの絵本ですよと広告で強調されていたのが笑えるやら、もの悲しさを覚えるやら。絵本でこどもむけでない場合ってどんなんだ・・。
石川雅之
イブニングKC全13巻 / 講談社
ジャンル:青年・学園 / 好み度:★★★★★おすすめ