式の前日 穂積

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結婚式を前日に控えた男性と女性の会話「式の前日」ほかあずさ2号で再会・モノクロ兄弟・夢見るかかし・10月の箱庭・それからを収録した短編集。
表題作は、同じ家に住む同世代の男女の会話。縁側で寝そべる男性、社会人も3年目でなんとか軌道に乗ってきた。次の日は結婚式に出席しないとで有給ももらったそんな会話やモノローグ、女性はそんな男性をせっつかせ、結婚式のドレスのことやら席の配置やらの話を男性に振ってみたり。
題名とおり、お似合いのふたりの結婚式前日の打ち合わせを兼ねた他愛ないやりとりだと思っていたらば、二人の関係は予想と違っていた。これから家族になるふたりではなく生まれたときから家族の間柄だったわけで。最後のやりとりを見てはじめから話を読み返す。恋人同士と思って読んでいたところはそのまま家族の会話となる。そしてスルーしていた部分もクローズアップされる。なんというかやられたという感と1度目よりもふたりのやりとりが心に染みる。
ほかの作品も、何気ない柔らかでありふれた人物同士のやりとりの後、事の真相が提示され、ああそういうことかと納得する構成が多いですね。日本のほかに外国が舞台になったり、すこしふしぎ要素を織り交ぜていたりと、おそらく描かれる主題はほとんど同じながらワンパターンは感じなかったところが好い。
表題作以外ではあずさ2号で再会がほろっときました。
あずさ2号で再会は、別離した元亭主が妻が仕事で出ている間に7歳の愛娘のところにやってくる話。年の割りにしっかりした娘、別離した奥さんのその後がさりげに気になるおとうさん、親子の会話が染みる。
モノクロ兄弟は、お互い惚れていた女性の葬式で10年ぶりに再会したおっさん兄弟の話。中年のかつての恋愛模様とかなんというか、じんとくる。
夢見るかかしは、外国の家族もの、かな。複雑な家庭環境の中ですごした兄と妹。妹の結婚式を機に戻ってきた兄。10月の箱庭は小説家と女子高生の話。こちらはがっつりすこしふしぎ話、かな。
読みやすく写実性の高いきれいな絵柄と最後にあっと思わせる構成が見事。

穂積
フラワーコミックスα全1巻 / 小学館
ジャンル:女性・ドラマ / 好み度:★★★★★