戦国武将としての出世と卓越した美術品を得たいという物欲の間で悶絶を繰り替えす武将・古田織部(左介)の物語。
主人公は織田信長・豊臣秀吉に仕えた古田織部。数奇者と評されるほどに、出世はもちろん望むがそれ以上に美しく価値のある美術品に心を奪われるという気質。
戦国ものの要である国盗りの武勇や策謀のエピソードももちろんありますが、茶器や美術品、建造物といった当時の文化をテーマにしています。武士と茶人の関係とか群雄割拠の時代の政治とまったく関連がないわけでもなく史実をからめたエピソードも違和感がありませんでした。
戦国時代の美術品や武家社会における茶の道の立ち位置ってのがいまいちよくわからなかった私には実に興味深かったです。もちろん策略や武将同士のやりとりも見ごたえあり。
古田のキャラがいい味だしてますね。美術品の心の中の寸評はわかりやすいけどちょっとくどい、また擬音が多いのが特徴。あなたは大阪のおばちゃんですかとひそかに突っ込んだり。目利きとしてはすごい人なんだろうけども。
あと武将としての顔もきちんと描かれています。ここという正念場におけるぎりっぎりの顔をしつつもやりとげる姿はすごい。一般的な武士の勇猛果敢さ卓越した戦術、そういったものと程遠いのにある種のかっこよさを感じます。が、最後はやっぱり物欲なんですよね~。
古田のおどけたキャラと利休の静かなキャラの対比も印象に残りました。
山田芳裕
モーニングKC全25巻 / 講談社
ジャンル:青年・時代 / 好み度:★★★★☆