美しい人魚たちと海の生物たち、そして人魚たちを守る元人間の兵隊の海の中の物語、という架空のお話を作る少女の物語。
美しい人魚を中心とした海の物語は、一人の少女によって作られた物語という構図。架空の人魚の話と作者である少女の現実の話が交互に綴られています。といっても人魚の話の割合がけっこう多め。たまに出る現実の場面で、ああこの人魚の話は少女の創作だっけと思い出すというかんじ。
人魚物語における主人公の人魚は少女の投影であり、少女の環境や心情が人魚物語という形で描写されるという手法のようです。あからさまに少女の心情を反映したような演出でない、さりげなさを感じるところも良。今まで見たことのない手法で、やっぱり著者の感性はすごいなと再認識。
現実の少女には母の家出と自分の出自、親しかった男の子の死と暗い要素があり、生きるうえで出会うどうしようもないこと、幸福なこともあれば不幸なこともいきなりやってくる、そんな厳しさをエピソードにからめています。
人魚の装飾と実益をかねたアクセサリー設定や、死んだ男性の死体を傀儡とし人魚の護衛につけるという設定が印象深かったです。人魚のアクセサリーがフナムシとか乙女チックじゃない生き物がチョイスされているのは著者らしいなあと感じました。
TONO
Nemuki+コミックス全5巻 / 朝日新聞社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★★