博士号は取ったものの職が決まらず大学の研究室にいる三十路の青年は、かつて親しかった叔母の忘れ形見である12歳の少女を引き取ることになる。頑なな少女と不器用な青年の心は「お弁当」がきっかけで次第に近づいていく。
三十路の独身・職なしの貧乏学者の青年と無口な中学生の少女の擬似家族物語。主人公の青年と少女の母親である叔母とは年が近いため、主人公にとっては叔母というより姉に近い親しい存在だった。家庭の事情から疎遠になっていたがある日その叔母が亡くなったことを知り彼女の希望で彼女の娘を主人公が引き取ることになる。
無口な少女との距離を測りかねた主人公だが、叔母のきんぴらごぼうの話でその距離は縮まる。主婦な少女と一人暮らしの無頓着な青年とのやりとり、徐々にグレードアップしていくおべんとうを通して描かれる交流が見所。
もたつかないテンポの良い展開とほっこりする描写がツボでした。擬似家族のルールがおべんとうをきっかけに、またおべんとうを介して交流が深まるという構成は斬新。家族内だけでなく少女の学園生活や主人公の交友関係もからみ、けっこう的を射た人間関係の描写も興味深いところ。少女のある意味質実剛健な気質が個人的にツボでした。
シリアスだったりしんみりしたりするシーンもありますが、全体的に明るく前向きな雰囲気なのが良いですね。ほのかな恋愛模様もからめているようで先が楽しみ。
柳原望
MFコミックス全10巻 / メディアファクトリー
ジャンル:青年・家族・ドラマ / 好み度:★★★★★