葬儀社で式典補佐のバイトの女性は働き始めて間もない女性は、新米の自分に辛辣な言葉を放つ上司の男性にときめいてしまう。葬儀を通して描かれる、ひとの生と死と恋と性とつながりを茫洋と描いた物語。
主人公の女性は葬儀の式典補佐のバイトをはじめたばかり。仕事に慣れないせいか失敗もありそのたびに教育係の上司の男性に辛辣な言葉を浴びせられる。上司は主人公だけに、というわけではなく主人公以前のバイトは彼の口調で続かなかったという。
幼少時の兄の失跡があってか感情が希薄、生と死の境目の認識が曖昧で、相手に求める愛情表現が自分の首を絞めること、という主人公の女性と、家業とはいえ死に近い葬儀社を本来継ぐつもりがなく葬儀とは無縁の生活を求めごく普通の結婚をしたはずだったが相手が普通じゃなかった上司の男性の恋愛物語。
普通とは何ぞやという命題の元、歪ともとれる恋愛模様が主軸。舞台というか背景となる人の死に関しても、彼女らの葬儀という仕事の描写を通じて丁寧に描いている。あとがきを見ると著者自身が葬儀の仕事に携わったことがあるとのことで納得した。著者らしい、ひとのこころの昏い闇みたいなものが濃くしみ出てくるような話だが、静謐な雰囲気で読後感も良いところがすごい。
ふみふみこ
フィールコミックス全1巻/ 祥伝社
ジャンル:女性・ドラマ / 好み度:★★★★☆