戦争後の片田舎の街のボンクラ駐在さんの青年を彼の後輩の視点から描いた「金色騎士」、村に危険が迫ると鐘を鳴らす役目の少女を中心とした部族間の物語「鐘守り姫」、「雑貨に埋もれた乙女」を収録したコメディドラマ短編集。
「金色騎士」
戦争後のとある片田舎の街の駐在さんの青年・四郎は、自堕落で女好きでボンクラな青年。普段の態度はいい加減だけど、実は有事の際は有能で、弱い者の味方でやるときゃやる気質。
過去四郎に助けられその本質を知っている後輩の少年の視点から、彼らが出会ったトラブルを通して物語は綴られます。読みきり形式で2作品。
全体的な雰囲気はコメディに近いですが、本筋は泣かせるドラマだったり、情が深く一辺倒でない恋愛模様の話だったり。特に2話目の話は秀逸だなと思いました。
男にいいように使われた「都合のいい」女性の出した結論と、女性の豹変というかその本質に正直恐れを抱きつつも女性に惹かれる、かつてだました側の男性の心理。オチが上手いなあ。
「鐘守り姫」
危険が迫ると鐘を鳴らす役目の少女は、仮想敵とされる部族の長の息子である青年と出会う。西欧系文化な主人公の村とオリエンティックな部族の村との諍いやトラブルは、フロンティア時代の南アメリカのようであり、歴史上よく見られるゴタゴタのようであり、ご近所トラブルのちょい深刻な話のようであり。
主人公と青年のコメディなんだかロマンスなんだかわからない絆の深まりと共に2つの民族の和解が綴られています。共通の敵の登場で繋がりができるってのもリアルだなあ。
艶漢よりもゆるめな印象。最後はわりといい話でまとまっている感じだからか。それにしても艶漢でも思ったけどこの耽美絵柄でコメディをうまくまわしているなあと。特に、意に染まぬときのキャラの表情がオカルトというかおっさんになっているのがインパクト強なんですよね。可愛い少女でも美形のおにーさんでも美少年でも同じってのがイイ(笑)
尚月地
ウイングスコミックス全1巻 / 新書館
ジャンル:少女・ファンタジードラマ / 好み度:★★★★☆