恐怖の復活(ホラー・リザレクション) 和田慎二


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伊豆沖の海底で発見された太平洋戦争中の潜水艦から2体のミイラが引き上げられる。一方は砂と化したがもう一体は無事引き上げられ大学の研究室に運ばれる。大学教授の娘・はたわむれにミイラの棺の中に入っていた装飾品の腕輪をつけ抜けなくなってしまう。それは恐るべき惨劇のはじまりだった......。表題作他5作の短編を収録した作品集。
ミイラというとエジプトを連想しますが、この話のミイラの由来?はもっと最近で、戦争の狂気が絡んでいるようです。作者はフランケンシュタインやミイラ男といった映画も好きらしく、ホラー映画そのままの展開や描写はかなり真に迫っています。恐怖描写だけではなく、恋愛描写も丁寧に描かれています。主人公(ミイラに追われる女性)の恋はいうに及ばず、ミイラ男の愛と哀しみも織り込まれているところにストーリーの深みを感じました。少年向けはアクションと少女向けの繊細な心理描写が絶妙にブレンドされた感じです。
それにしてもミイラの男女は生前はどういう境遇だったのでしょう。姫と騎士っぽそうなのですがいつの時代の人なのか。なんだかミイラの製造設定とアンバランスな感じがしないでもなかったです。読み込みが足りなかったのか;
同時収録の「ポケットにティンカーベル」は異世界の手のひら大の女性と高校生の男の子の物語。昔なつかし冒険活劇っぽいですね。エンディング後の彼らの生活がとても気になる今日この頃(下世話な...)
「アラビアン狂想曲」はタイトル通り千夜一夜物語っぽいアラビアファンタジー。物語の中になぜか東村山音頭が出てきますが。時代を感じるな~。(今日びの若者は東村山音頭を知っているのだろうか...)その他、嵐の日に人魚を拾った青年の話「吃水線」、 小学生の女の子を主人公にした、お子様向け特撮を彷彿とさせるコメディ「ラムちゃんの戦争」「さよなら林間学校999」などがあります。

和田慎二 / 秋田文庫全1巻 / 秋田書店
ジャンル:ホラー・アクション・少女 / 好み度:★★★★☆
同時収録作品:ポケットにティンカーベル/アラビアン狂想曲/吃水線/ラムちゃんの戦争/さよなら林間学校999/他(文庫収録)