教室で教師がクラスに所属していた少女の死を告げる。他殺だという。主人公であろう少年がはその少女の第一発見者らしいのだが、記憶喪失となっていた。そして主人公には他者には見えない三日月をモチーフにしたような幻覚が見える。幻覚は少年に語りかけ、少年自身の記憶の化身のようなもので、自分のことはメモリーと呼べば良いと告げる。
記憶喪失、なのだが主人公は幻覚の存在もあってか記憶がないことへの焦りのようなものは一見見受けられない印象。どうも自身の記憶を探っていき幻覚の鍵穴に指す鍵を得ると記憶が取り戻せるらしい。少年の友人達、死んだ少女の知人?の少女、後見人らしき胡散臭い大人の男性、少年を監視する?謎の人物。調べていくうちに罪を犯し刑務所に入っているはずの父親はそこにはおらず・・など徐々に謎が出てくる過程で、超能力的な要素も入ってきて、少年の記憶は世界の存亡に関わるということが暗に匂ってくる。
文章で書くと大仰だが作品自体の雰囲気は坦々としている。情景描写が落ち着いているし少年の幻覚のフォルムがシュールだからだろうか。面白そうに見えるがそれを前面に出さずぼんやりとしたフィルターを通して見せているような印象を受ける不思議な作風。
和久井健
ヤングマガジンコミックススペシャル全5巻 / 講談社
ジャンル:青年・SF / 好み度:★★★☆☆