地獄のアリス 松本次郎

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荒廃した世界。主人公の少年は父を殺されたことから人造人間セルロイド・アリスと共に廃墟で暮し悪党たちから荷を奪っていたが、偶然助けた女性に交渉を持ちかけられ彼女のいるコミューン(集落)に行く事になる。そこでは主人公のように女性が連れてきた親無しのこどもが生活していた。
ちなみに主人公は正義感でキャラバンを襲った悪党たちを倒したわけではなく悪党から物資を奪うのが目的で、たまたま女性を助けた結果になったというかんじ。相棒たるセルロイドの女の子との連携作戦と近距離でのへタレ度を示す酒場の話を見せ、主人公が遠距離射撃のみが得意というキャラ設定を示しています。主人公のみならずメインキャラの気質を自然に読み手に解らせる構成が上手いな。
主人公を含め親を殺された過去を持つ孤児たちは悪党を殺すことを是とするこども故の短絡さを、彼らを拾った女性は交渉や知略など武力一辺倒ではない方法で生きる思惑を。こどもの考えと女性の考え、どちらとも各々の立場からすると説得力を持たせる演出も見事。まあこれからどう話をもってくるかにも寄ると思いますが。
絵柄と舞台設定のためか廃頽・陰鬱な内容かと思いきやけっこうコミカルというか笑いが含まれるノリもあったり。とはいえ厳しい環境下でのシビアなエピソードもきっちり組み込まれ、そのメリハリが秀逸。
単なる世紀末的な弱肉強食がテーマの話ではなくけっこう奥が深いものがあるタイトル。ストーリー重視の人には読んでみて損はないかと。

松本次郎
愛蔵版コミックス全6巻 / 集英社
ジャンル:青年・ディストピアドラマ / 好み度:★★★☆☆