開花あやし事件帖 永尾まる

Amazon
開花あやし事件帖をAmazonで見る

明治時代、雑誌編集者の青年・千方は妖怪の手・「手手丸」に懐かれたことから、手手丸の本体の妖怪・阿猛丸をはじめとする様々な妖怪や幽霊と関わりを持つようになる。妖怪と人間が織り成すちょっとせつないオカルトハートフルストーリー。

明治時代。文明開化に沸く東京が舞台。不可思議系の記事を載せる雑誌「あやし」の編集者となった主人公の青年・千方は、編集部に持ち込まれた封印された箱から出てきた妖怪の手「手手丸」に懐かれてしまう。それがきっかけで手手丸の本体である鬼の阿猛丸をはじめとして様々な妖怪・幽霊と出会うという展開。
手手丸に懐かれたことから妖怪たちと縁が深くなった青年のお話。妖怪を主題にしていますがおどろおどろしさはなく、「猫絵十兵衛御伽草紙」のように、人情ものというかちょっぴりせつないハートフルな雰囲気の物語です。
穏やかで頼りなさげに見えるけれど固定観念に囚われない大きな器を感じる主人公の気質がツボでしたね。手を取り戻しにきた阿猛丸と主人公のやりとりも緊張とほのぼのが交錯していい味が出ています。
あと手手丸は妖怪の手らしい怪奇的造詣ですが、主人公に懐くときとかお風呂に入ったりするときなど所作がいちいち可愛らしく微笑ましいところも萌えました(笑)手だけなのに表現が豊かだと感じるところはさすがというべきか。
古来より描かれる妖怪の怪奇性を失わず、さりとて陰な印象ばかりを与えない絶妙なバランスが特徴。妖怪と人間、つかず離れずの距離感でいい具合に描かれているということか。

永尾まる
怪コミックス全1巻 / 角川書店
ジャンル:青年・怪奇コメディ / 好み度:★★★★☆