産休の代用で小学校の教諭として赴任した新米女性教諭。このご時世、職にありつけて幸運と意気揚々だったものの担任を受け持つクラスではしょっぱなからクラス全体を巻き込んでの議論が始まる。主人公が受け持つ小学生たちによって信仰が形作られる過程を描いたロジカルドラマ。
狭いコミュニティの中で生み出される信仰の核はひょんなことから始まる。というかクラスの中の1人の男子の画策によるものなのですが。表に出ず信仰の枠組みをつくる聡明な頭脳と狡猾な行動力を持つ男子、その男子に翻弄され宗教創設に知らず加担することになる凡庸で、初めての教師の仕事でとまどう教諭、おそらく信仰の神体となる浮世離れしたシャーマニックなカリスマを漂わせる美少女。
ある議論を行うことにより2ツの派を作らせたり絶妙なタイミングで手品のネタありの奇跡をクラスメイトに見せたりと、いわゆる人心掌握術をうまいこと使っていくことからクラス内にある形が出来上がっていく。
小学生がつくる宗教ということでフィクション性を高めてはいるものの、あーこうやって宗教ってできていくんだなあとぼんやりとでも感じられました。組みあがる信仰をめぐる登場人物のドラマ性よりも、宗教が組みあがる過程を論理的に見せるという面が強い内容かな。心情描写がまったくないわけではないのですが。ドラマというよりミステリサスペンスに近いというか。題材だけに個人的にこういうアプローチのほうがいろんな意味で気楽に読めるかも。丸いどちらかというと牧歌的な絵柄で雰囲気も明るいコメディ風だけど中身は濃いというかんじ。
オープニングではある程度形ができたときの周囲の反応から始まっていますが新興宗教がうけるありがちな反応だけにどう話を持っていくのか気になるところ。「面白い」よりも「興味深い」が先にたったタイトル。
青山景
イブニングKC2巻/ 講談社
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★☆
絶筆。