マチキネマ サメマチオ

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普通の日常を普通に暮らす人たちのリアルで茫洋とした心象を描いた短編集。
8篇の短編集ですが目次の構成やタイトルのセンスが個性的。
内容はどれも客観的な観点からは劇的だったりドラマチックに盛り上がっておらず、人生それなりに長くすごせばあるよなーと思うような題材なんですよね。でも印象に残るというか心に残るというか。芸術性センスってのはこういうのを言うんだろうなーと感じる、そんな雰囲気。

「番頭フォーリンラブ」
古き良きうだつのあがらない頑固親父な銭湯のおっさんが、遅くに銭湯を利用する客で同世代くらいのおばさんに密かな恋心を抱く話。正直、おっさんの脳内で物語は完結してます。相手の女性がどう見ても吉永小百合に見えない恋は盲目なとことか、なんということはない挨拶の言葉をかけられず悶々とするとことか、勝手に女性の人生模様を想像してみたりとか。あんたは思春期の坊か!と突っ込みたくなると同時に妙な愛おしさが(笑)

「幻想の戦闘的妄想少女的な恋的暴走」
タイトルがすごい。この女子の気持ちとか行動とかすごく共感してしまったよ(笑)私の場合は恋云々じゃなくちょっとだけ自分の置かれた日常に悶々としてわー!っと叫びたくなる衝動だったり、アクション系アニメに中てられたときとか、あったなあ、こういう感覚。保体の心理学的な項目にそういう心理現象?の説明があったから極端な少数派ではないと思うけど。

「街と道路とやがて寒くなる秋のアムール」
とある男女のやりとり、とある自転車に乗る男女の行動、駅に書かれたらくがき。
人通りが少ない時間帯だったりいつもとちょっと違う道にいったときだったり状況はさまざまだけど不意打ちのように目に入る他人の日常の風景。それは時に自分の常識の範疇を超えてたり後から反芻すると幻だったのかと思うこともしばしば。そんな情景のいくつか。

「49日の常連客」
冷やしぜんざいを食べにくる奇妙なお客の話。
「10年後の俺へ」
タイムカプセルを埋めたことをふと思い出し悶絶する男性の話。過去と現在の対話。
「彼女のTシャツが毎日ダサかった点」
古き良き、でもスタイリッシュで今時な雰囲気も内包する青春のお話。と解釈した(笑)牛乳瓶底のメガネって何年ぶりに見ただろう。

「まいご道」
おそらく著者の体験談。迷子になったと気づいたときの主人公の少年の対応がものすごく笑えてそこはかとなく共感もあり(笑)迷子になったり道に迷う人って思い込みが激しいのかね・・。
「まあちゃん先生」
これもおそらくは著者の以下同文。大酒飲みで周囲に迷惑をかけていた叔父は主人公を押さない頃から「まあちゃん先生」と呼んでいた。親戚連中からは疎まれていたが主人公はそこはかとなく嫌いと言い切れない感情を持つ。人の死を扱う話ではあるものの劇的な展開はなく、流れるような話運び。現実で感じる空気感。

ちなみに著者自身はこの本の題名を「すてきでした」にしたいようでしたが結局編集側が「マチキネマ」にしたそうで。すてきでしたも捨てがたい。マチキネマ、編集側がつけたにしては洒落てるなあと思ったら著者のホームページのタイトルでした。あははん。
上記は1巻の内容。2巻も出ましたが詳細割愛。

サメマチオ
ネクストコミックス全2巻 / 宙出版
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★☆