非怪奇前線 なるしまゆり

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学生時代からの「親友」である蟹喰菜々生のマンションに日参する痛い男・ワタナベ。彼のかつての妻と蟹喰の過去のとある出来事が彼をそうさせているようだが・・。
えーと。かいつまんであらすじが話せません;主人公は蟹喰菜々生とワタナベという青年。彼らが出会った怪奇にまつわるミステリドラマといったところか。一見ジャパニーズホラーのようですが根っこは、人間の心理とドラマと、生きるうえで密接なものであるのに人間にはコントロールできないなにか。
ワタナベはS系美人の蟹喰の住居に足しげく通うところから話ははじまります。ワタナベは若くしてでき婚をしたが妻と娘は溺愛していた。しかし妻は少しずつ狂いだし離婚。ワタナベは妻が狂った原因を調べていくうちに元妻と蟹喰の過去の出来事を知り・・という流れ。過去といっても生々しい話ではなく幼少期に同級生でその接点も一見日常よくある話だったんだけど、みたいな。
彼らが出会った怪奇は作為ではなく現象に近いものであるあたりがなかなかにリアル。正確には怪奇ではないのでタイトルに非がつくわけで。
蟹だなんだと視覚的に「それ」を捉えられるというのはフィクション(まあリアルでも存在するかもしれないけど)であるにしても、事故などで近い場所にいても身に降りかかる状況に差が出たという話を聞くときのなんとも言えない気持ちを思い出す。彼らのどこにも違いはないはずなのに。
鮮烈というか強烈な個性の蟹喰、不器用なほど真っ直ぐなワタナベ。このコンビのやりとりは笑みをうかべながらあやうい綱渡りを楽しむようなそんな印象でした。
表現が的外れな表現しかできない自分がもどかしいですが一辺倒なホラーでなくあくまでドラマに近い。うなってしまうほど緻密な構成と、突っ込んだ心理描写なのに鬱になりきらない雰囲気が良いなあ。
同時収録は「きりんは月を食べる夢を見る」わー、昔の絵柄だーと思ったら98年発表作品だった。このころはウイングスはもう買ってなかったんだっけ。画面的に強烈な日本昔話的にホラーな場面とゆるくほんわかした雰囲気がマッチしているあたりがすごいな。

なるしまゆり
ウイングスコミックス全1巻 / 新書館
ジャンル:少女・ホラー・ドラマ / 好み度:★★★★★