人間国宝の祖父とその技術を受け継ぐ父を持つ主人公の高校生・滉の家は刀鍛冶を営む。滉は跡取り息子だが鍛冶に興味はなく家を継ぐ気もない。しかし刀研ぎは好きでその技術も確かなもの。そして主人公には刀が人間の姿として見えるという能力があるという設定。刀研ぎと特殊能力を使い、刀にまつわる事件や騒動を解決するミステリーな話が主軸。
幼い頃から刀の意識たちと交流しているからか人間の友人はほぼいない状態の主人公ですが、とある事件から主人公を理解し友人となる同級生もでき、刀を通して様々な人間とも縁ができることに。孤独な主人公の話というわけではないので、シリアスばかりでなくほのぼのとした話もけっこうあります。
主人公の特異能力は、俗に言う擬人化とも言えるのか。単に姿が見えるということで終わらせず、きちんと物語に絡める要素として設定しているところに構成の綿密さを感じます。刀の姿は造られた年代の時代の人間のような姿で、かつ刀の状態によってその様相も変わるとか、刀の由来がわからずともその姿を見れば大体推察できるとかね。
刀研ぎ自体の腕はもちろんあるだろうけど刀の由縁や歴史や不具合のあるところを刀に「直接」聞けるってのが強みなんだろうな。
単発の事件もあれば陰陽がらみの刀の根っこの深そうな話もありその内容も多彩。特殊な設定のミステリとしても情念を語るドラマとしても読み応えがあり読後感も良いタイトル。お勧めです。
かまたきみこ
あすかコミックスDX1~ / 角川書店
ジャンル:少女・ミステリー / 好み度:★★★★★おすすめ