鎖衣カドルト 吟鳥子

Amazon
鎖衣カドルトをAmazonで見る

理念や宗教など人間が生きるための指針と人の営みを描いたファンタジードラマ。
崇める神の存在がないつまり宗教が無い国で宗教における神官のような役割を担うのが鎖衣。倫理や道徳、刑罰などを鎖にたとえ、その鎖を自分の身にからませ、民衆に正しい道を指し示すという立場のようです。
主人公の少年は、過去スラムで経験した事柄から自分がいかに無知で偽善であることを痛感しその恥ずかしさ、いたたまれなさから自死を望む。その自死願望を戒めるために鎖衣となったという経緯を持つという設定。
自分の馬鹿さに穴があったら入りたいという気持ちが行き過ぎた感じということか。自分とは真逆のスラム出身の青年騎士や師匠の鎖衣、街の住人たち、水の国の女王に懸想する同僚の鎖衣の青年の行動を通して人生経験をつむ主人公。そして最後に水の神を崇める国の巫女と難民が流れてきた際の事件が綴られています。
同じ事柄でも考え方によってはその姿がまったく違うものになってしまうという話・・なのかな。神を妄信しているとしか見えない主人公、神の存在により歩みを進める巫女たち。難民流入の際のいざこざとそれに憤る主人公の台詞は実にリアル。最後に奇跡とも見えるエピソードが心憎い。余韻が残るというか心の隅に引っかかる何かを残すそんなラスト。
物語ももちろん好きなのですが、鎖衣の設定がかなりツボでした。主人公の自分の世間知らずに悶絶する姿も(笑)

吟鳥子
ウィングスコミックス全1巻 / 新書館
ジャンル:少女・ファンタジー / 好み度:★★★★★おすすめ