鶏肉倶楽部・マー様にささぐ・MEQUE MEQUE・コーヒー砂糖いり恋する窓辺・海のパイパイ・おたく2000・ミドリ色のすべすべした美しい身体・トースト考を収録した愛と官能の短編集。
「鶏肉倶楽部」
父から引継ぎ、ブルジョアの秘密クラブ・鶏肉倶楽部の会員になった青年の話。鶏肉倶楽部とは配布された卵を大切に育てる倶楽部。倶楽部活動の最後のイベントと物語のオチは思わずあっと言ってしまった。決め手はチーズ。血は水よりも濃し。
「マー様にささぐ」
えーと人気のオカマの人に懸想し襲っちゃう女の子の話でいいのか。女の子の語りはそれなりに含蓄があるのか。リードしてたのに形勢逆転(笑)。やはり年季が差か。
「MEQUE MEQUE」
コペルニクスの呼吸番外編。ジャグラーの苦く甘い初恋もしくは一瞬で通り過ぎた恋情。ジャグラーの彼女が去った理由の台詞がせつない。
「コーヒー砂糖いり恋する窓辺」
少女趣味の和風セレブ未亡人の恋。未亡人が恋をした女子高生、女子高生に親身になるマッチョ体育系の純朴青年、未亡人のメイド。4人のグダグダな関係と恋情と。
「ミドリ色のすべすべした美しい身体」
老学者と学者が調査で訪れた南国?の青年の話。部族の信仰の祭りと青年に魅了される老学者。1篇の映画を見ているような演出がすごい。青年への情動はおそらく老学者は人生で経験したことがなかったものなのだろう。ラストに流す学者の涙の意味するものは。
「海のパイパイ」
海の女性たちと一人の男性の官能ショートショート。やはり男性諸氏には痛い話だろうか。ある意味究極の幸福の中での昇天。でもやっぱりこわい。
「トースト考」
おまけもおまけの2P短編なのですが、一番面白かった話かもしれず。トースト男爵と名乗るいかにもな紳士が、喫茶店の定番メニュー「トースト」について薀蓄を語るだけの漫画。深い、深いぞトーストメニュー(笑)
マイノリティな嗜好の人の話が多いかなー。嫌悪感より芸術性を感じるのは絵柄と構成力が高いからだろうな。
裸婦画など古典絵画を見たときのような官能と耽美と静謐さを前面に出しながら、読み物(漫画)としてのオトシどころも抑えている短編ばかり。ある意味相反する要素をうまいこと融合させてるところが秀逸。人間の原初の感覚を鮮明に描いているというか。
中村明日美子
Fxコミックス全1巻 / 太田出版
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★☆