星河万山霊草紙 鈴木有布子

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とある自然豊かな町。そこは昔は木の精である木霊が人の子に嫁ぎ人のように暮らすことがままあり、住民たちも当然のように受け入れている木霊とヒトが共存した町。
主人公の家も5代前に木霊が嫁いでいる家で、現在も祖先の木霊は家族と共にありまた彼女は町で最後の木霊となっている。木霊は海難事故で行く目不明の夫を100年以上待ち続けている状態で、主人公の少年は木霊が好きでしょうがないが、当人には軽くいなされている日常、木霊は今までの経緯と確実に弱っていく力に自分の存在や状況に複雑な心境を抱く。
彼女の夫に良く似た子孫である主人公と幼馴染など、主人公の家族と周辺・町の人々の心情や話の流れがさりげなく巧み。時代の流れとともに失われるもの、残るもの、受け継がれていくもの、がテーマなのかな。
著者の話はやはり人物描写がしっとりと心に入り込むなあ。狭量のめんどくさい人物がいないからか読後感も良い。一度町の外に出た境遇からか客観的というか外の目で見るクラスメイト、もうただひとりとなった木霊をそれでも生かそうとする村社会の良い部分が出ている町民たちも印象的でした。
ネタバレになりますが、事故で死んだ先祖の魂は存続しておりその魂は主人公として生まれ変わったという展開になり1巻目の終わりで3年の月日がたった状態に。おそらく先祖が夫婦になったあたりの年齢に主人公がなった時点の話になるのかね。

鈴木有布子
KC×ITAN全2巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆