面識のない若い女性と初老の男性はある日時間限定の精神感応と心臓の状態が繋がることになる。彼らを結ぶものは男性の行方不明の娘。本格サイコサスペンス。
平凡な会社員の女性・真咲はあるときから理由なく涙があふれる現象に苛まれていた。その一方で彼女とは面識のない初老の男性・武藤は女性・つまり真咲の声を聞こえていた。そしてあるきっかけから、同じ場所にいなくても１時間だけ話ができるようになる、いわゆる時間限定のテレパシーが通じるようになる２人。しかも武藤は心臓を患っており彼の心臓の痛みが真咲にも呼応することがわかる。
２人を繋げたのは武藤の行方不明の娘とおそらくは同じ状態の人間の魂。冒頭にある真咲の不可解な症状は彼女たちの声に呼応した故。そして真咲は彼女たちの間際の感覚を共有というか体験し、娘の行方を捜す武藤とともに真相に近づいていくという展開。
ホラーもしくはサイコな要素も肝ですが、話の根幹は武藤の娘の結末と原因たる人物を探り当てるというサスペンス。真咲は武藤とともに心臓発作という爆弾を共有しているゆえの緊迫感と臨場感の描写すごい。
一見脇道だらけの構成ですが、１時間という貴重な共有時間に邪魔が入りまくりでやきもきさせるというのも狙いの一つなのかな。非現実的な要素を、主人公が追い込まれる・切羽詰る状況におくための舞台にうまく組み込んでいます。久々にはらはらどきどきする（古語）サスペンスを見たという印象。
岡村星
シリウスコミックスネメシス全５巻 / 講談社
ジャンル：青年・サスペンス / 好み度：★★★★☆