罪を犯した人間の魂が送られる地獄は数多くの部署に分かれた広大な場所。ゆえにその管理などの業務も膨大なものとなる。そんな仕事をさらりとこなす上司よりも有能で冷徹でドSな閻魔大王第一補佐官・鬼灯と周囲の面々による仕事風景や日常を描いたコメディ。
舞台はいわゆる地獄。 一口に地獄といっても地獄は八大地獄と八寒地獄の二つに分かれ、さらに二百七十二の部署に分かれている。それゆえに各々の部署との連携や管理・その他もろもろの雑事をあわせるとその業務は膨大なもの。鬼が仕切る人間の魂に罰を与える地獄の風景そのままながらその実情は人間界の巨大企業の構図と同じといったところか。主人公は閻魔大王の片腕の鬼神で、まさに鬼のような業務量を淡々と捌く第一補佐官・鬼灯。冷徹、冷静、辛辣、毒舌、でもものすごく有能で芯は通った気質なので頼られ慕われているというキャラ。
閻魔大王は裁判はきっちり行い威厳というかカリスマはあるものの他の業務の処理能力がさっぱりで本来の気質はかなり気さくというキャラ。
閻魔大王をはじめとし基本的に天然やヘタレ系の上司や部下がボケ担当、主人公がツッコミ担当。また主人公のライバルが登場した際は他のキャラが合いの手を入れるといった具合で、キャラ同士のやりとりがとにかく軽快で楽しく、さりげなく地獄を舞台至らしめるブラックジョークも交えたノリが見所のひとつ。
地獄の名所や現世の有名人も登場しそれをうまくアレンジした展開は見事。地獄というファンタジーな舞台ながら、戦後の人口爆発により亡者は増える一方とか悪霊の凶暴化とかお局とか天界との関係とか、けっこうリアルさがにじみ出ているところもミソ。
あと幕間の著者の文章がなんか好きなんですよね。自然体でするっと頭に入る読みやすさとなにげない話題なのに実のあるという印象。
江口夏実
モーニングKC1~ / 講談社
ジャンル:青年・コメディ / 好み度:★★★★★