かわいそうな真弓さん 西村ツチカ

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年を経るごとにお婆さんから少女へと変化する真弓さんと家族と周辺を描いた代表作他、ねむり姫・さよならみなさん・チカちゃんの発明小学校・△を収録した短編集。
表題作を含めシュールかつ独創的な設定と語り口で、人間の側面が描かれている印象。柔らかく優しいものだけではないちょっとビターな内容。その苦い部分が今までにない感じたことのないものを残していくような。
こういうシュール系短編というとラストはそれなりにほっこりする終わり方が多い気がするのですが、こちらは違う印象のものばかり。例えるならちょっと難儀しているところに手を差し伸べられ助かったとほっとした直後に放置され去られるというかんじ。えーと思わずつぶやいてしまうおいてけぼり感。だがそこがいい。
表題作のかわいそうな真弓さん(原題・ポリプ)は年を重ねるごとに若返る真弓さんのお話。彼女には娘と孫の男の子がおり同居していますが2人は普通に年を取っています。娘は母を外に出さないように躍起になり真弓さんは若返るほどに奔放に恋をし相手と大人の関係を重ね、それを傍観する孫。淡々と描かれる作風の中、各々の心情がダイレクトに伝わる演出。孫のガールフレンドが真弓さんの謎を世間に公表した際の家族の心情描写が印象的だった。あとの過程もなんかリアリティがあったなあ。
最後のオチというかラストシーンはちょっとやられた。あそこが伏線で虚をつかれたかんじ。結局みんな真弓さんが大好きだったということか。老いとか生き方についていろいろ思うところが出てきそうな内容でした。

西村ツチカ
リュウコミックス全1巻 / 徳間書店
ジャンル:青年・短編集 / 好み度:★★★★☆

書店に限定版しか置いてなくて仕方なしに買ったのだけど、特典が描きおろし小冊子で得した気分に。