黒髪のヘルガ 朔ユキ蔵

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「少女」と呼ばれる対象を至高の存在として崇める清さを第一と生きる住人達の街。そんな街で只一人の「時期外れ」と呼ばれ迫害を受ける黒髪の少女がいる。少女と彼女を取り巻く人間たちの愛憎・情愛といった様々な感情が静かに交錯する物語。
黒髪の少女を主人公とした寓話風濃い目のファンタジー。主人公は「時期外れ」と呼ばれ迫害を受けており、主人公と唯一親しくする少女も周囲に主人公に近づくなと諭されるシーンからはじまる。中世ヨーロッパのそこそこ大きな町といった感じの世界観。特に説明もないまま主人公の辛い立ち位置が描写され、街の住人の言動もそれ自体はおかしくはないもののどこか違和感がある。
どうも街の絶対的な存在として「少女」がおり、その存在を連想させる「清く正しく美しく」が生活の基礎となっている模様。主人公の少女は、住人にとっては極端に素行が悪く感じるということらしい。といっても少女の行動は読み手にとってはごく普通だし、住人のほうが極端すぎるという印象。あと、一定の時期におけるほとんどの住民の記憶が欠落し、主人公は記憶が欠落しないというのもポイントらしい。ちなみにその一定の時期ってのは動物にあるあの時期まんま。
説明していくと長くなるしネタばれしすぎるきらいがあるので割愛しますが、設定はかなり興味深かったです。最後まで読んで漠然と、あ、こういうことなのかというくらいの理解でしたが、徐々に世界の全貌が分かっていく構成は面白かった。
記憶が欠如するキャラと欠如しないキャラの主人公に対する感情の差異とか葛藤とかそれに対する主人公自身の感情の描写とかいろいろ奥深さがありました。抒情的で特異な設定のファンタジーを好む人にはオススメの一作。

朔ユキ蔵
Fxコミックス全1巻 / 太田出版
ジャンル:青年・ファンタジードラマ / 好み度:★★★★★