ひょんなことから見知らぬ男女が温泉宿に泊まることになる表題作のほか6篇と2編の後日談を収録した様々な形の男性と女性の関係と彼らと彼女たちの様々な心情を描く短編集。
「夜をとめないで」
表題作。出張先で本社に電話をかけるリーマン。そのまま出張先が転勤先となったことにショックを受ける彼の前に、いっしょに旅館に泊まってくれと頼む女性が現れる。とある理由からあぶく銭を得た女性は旅行で景気よく使いたいが女一人では旅館にも泊まれないからというが・・。双方ちょっとわけありな見知らぬ男女が温泉宿に泊まる話。雰囲気といい話運びといい読後感が良い話でした。
「仮初めの花」
過去に容姿を侮辱された女性は整形した今は男を傷つける。整形した理由がもてたいとかじゃなく男への復讐みたいな?鬱系というか後ろ向きな自己完結モノローグと過去を知る男との会話の後、おそらくは純粋に(たとえ主人公が昔の姿だったとしても)好意を持っていそうな男性とのやりとりでしめくくられる。話としては興味深いが主人公の気持ちは(いい意味で)よくわからん。
「はかなごと」
いわゆる百合物。いろんな意味で女子のめんどくささと身勝手とも言える側面を愛おしさと感じさせる雰囲気でさらりと描いている印象。
「たゆた」
死んでしまった彼氏が幽霊となって彼女の部屋に現れる。知覚できるのに遠い、双方相手が大切で大切ででもどうしようもなくそれでも一緒にいたい純粋たる気持ち。彼氏も彼女も穏やかで柔らかい気質ゆえによけいにせつなく泣きそうになる。
「シャンプーリンスコンディショナー」
恋人の女性の浮気現場にぶちあたったと同時に別れを告げられたアラフォーサラリーマンは、元カノの使っていたシャンプーの香りがトラウマになりつつあった。そんなとき酒の席で酔い、同じニオイをさせる同僚の女性に元カノの名前を言ってしまったことから・・。臆病になってしまった中年?男性とずんずん進むタイプの活力ある女性の話。微妙な距離感から踏み込もうとする女子の行動が気持ちいい。男性の気持ちはわかるわ・・ほんと。
ハルミチヒロ
白泉社(楽園)コミックス全1巻 / 白泉社
ジャンル:女性・恋愛 / 好み度:★★★★★