人間の住む世界「現世」のほかに人ならざるものが住む「常世」が存在する。現世にありながら、常世からくる客をもてなす旅寓の従業員を勤める天野。ある日、常世の王が旅寓にやってきて天野が担当することになるが、やってきた常世の王は、学生時代に海に身を投げた天野の幼馴染・観月にそっくりだった。
常世の王は、現世から人身御供のように連れてこられて据えられるため、天野は王が観月かと思うが、王は現世での記憶がなく・・という展開。
常世の設定と過去の事件と天野の設定が上手いなと感じました。王の時代がかった口調とかふたりのやりとりとかせつない文学系ファンタジー恋愛ものらしくて好みでした。ちょっとオカルトっぽい設定も絵柄とあっていてよかったと思います。物語の〆に天野の後輩を狂言回し的な立ち位置にしたことでうまくまとまっている印象。読みやすく印象に残る話の構成が秀逸。
同時収録のjet lagは、幼少の頃傷を負ったカズマと負い目を感じて疎遠になったミツルの話。ひょんなことから再会しというはじまり。こちらはごく現実的な設定の青春BLですが、思春期らしい荒削りな感情、ある種刹那的な心情描写が印象的でした。
文善やよひ
カンナコミックス全1巻 / ブランタン出版
ジャンル:ボーイズラブ / 好み度:★★★☆☆