竜の学校は山の上 九井諒子

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帰郷・魔王・魔王城問題・支配・代紺山の嫁探し・現代神話・進学天使・竜の学校は山の上・くず・金喰い虫くんを収録した著者の短編集。
RPGやファンタジーの設定世界においての現実的な視点を主題にした内容。切り口がうまいとうなったタイトル。中にはまんま某竜探索ゲームの設定があってびっくりしましたが初出がWEBや同人誌だったのでなんか納得。
「帰郷」魔王を倒した青年が生まれ育った村に帰郷した話。魔王が死んだことによる弊害と勇者である青年の実情と人間社会の思惑。純粋であるがゆえの勇者の悲哀。
「魔王城問題」魔王を討ち取った後、人間の国王は魔王の住む城を改築し住もうとするが・・。これも帰郷と同じく某RPG世界観。あーあったなあ。滑る床とか毒の沼とか。懐かしさとともにゲーム内ではスルーするけど実際に現実にあったらこういう展開になるなあと納得がいくだけにせつなかった。
「支配」同じくRPGな世界観だけど魔王を創造したのは実は・・というSF仕立て。SF系ショートショートな内容。人間が脊髄反射する虫のようだーはかなり違うか(汗)
「魔王」美女と野獣ネタ。これもまたせつない・・。
「代紺山の嫁探し」日本昔話ネタ。オチもうまく効いている。娘の父親は娘のためと言いつつ結局自分のために行って玉砕。
「現代神話」
人間とケンタウロスの種族が共存する世界。ちなみに2種族は猿人・馬人と呼ばれています。このネーミングなんか好き。とある企業で働く新米社員の馬人の青年とキャリア系猿人の女性、猿人の夫と馬人の妻。この2組の男女を機軸に現代社会での問題点とか実情を描いたお話。馬人は労働以外の娯楽に疎く雇い主にとってはパフォーマンスの良い労働力、それでは猿人の雇用が損なわれるという問題をはじめとし、社会生活における問題点を主題にした内容。馬人の妻の最後の言葉がすべてを語る。
「進学天使」
背中に羽を持つ翼人の少女とごく普通の少年の話。ファンタジーな設定だけど飛行に関する薀蓄が妙に詳しくてリアルなとこが見所の1つか。本筋は進路を決める時期の少年少女のすっぱくもせつない物語なんですが。
特技を活かしての進路、好きな男の子と一緒にいるための進路、自分が本当に望む進路。
「竜の学校は山の上」
竜に関する学問を習得・研究する科がある学校のお話。研究や学問が進んでも実社会に何の役にたつでなしで将来性が薄い分野って実際にあるんだろうな。その辺の実情を竜に置き換えた内容は秀逸。
「くず」
うだつのあがらないおっさんは知人に人間科学研究所のバイトを紹介してもらう。それは田舎の不便な場所で共同生活をするというものだった。とある法則が人間に当てはまるかという内容。題名から察してください。主人公のなんともいえない心情とその次の心持が印象的。
「金喰い虫くん」
文字通りお金を食べる人の小話。硬貨や札の味の感想に妙に説得力があるところがツボ。

九井諒子 / イーストプレス全1巻
ジャンル:青年・ファンタジー / 好み度:★★★★★