マフィアが幅を利かせチンピラや悪徳警官が行きかう街。汚れ仕事専門の便利屋を営む青年２人は、マフィアと繋がる警官から彼らのシマを荒らす売春グループの殲滅を依頼される。その依頼がきっかけで彼らに拾われた元娼婦の女性が、青年２人と行動を共にすることにというはじまりのハードボイルドアクション。
以後は舞台となる街のことや２人の素性を良く知らない読者と同じ目線である女性の視点で話が語られ、便利屋の仕事がらみの出来事を描写しつつ個々人のドラマなどが綴られるという具合。
まあ完全に女性の主観のみではないですが、メインの視点を女性に持っていったことで読み手に舞台背景を徐々に紐解いていく構成は物語を興味不覚魅せている効果があるような。
シリアスかつシビアな世界観ですが、自己陶酔でも自己破滅でも廃頽でもなく、ただ在るがごとくといったかんじで、さらっとスタイリッシュな演出と画面構成が魅力。人物配置、粋なやりとり、作品全体の雰囲気は言うに及ばず話の流れもソツがなくてすっと話に入れるところも好み。
どちらかというと女性が好みそうな絵柄ですが、アングラアクションが好きな人も好まれる内容かと。
細かいところですが聴覚障害のキャラの独特の発音が聞こえてきそうな絶妙な台詞の写植が印象的でした。
コースケ
バンチコミックス１～ / 新潮社
ジャンル：青年・ハードボイルド / 好み度：★★★★★
そういや視覚障害に比べ聴覚障害のキャラってあまり見ないなあ。コミュニケーションの描写が難しいからなのかな。