JR小田急線を舞台に様々な形の恋愛模様を描いたオムニパス連作集。
タイトルだけ見て鉄の人たちの恋愛かと思ったけど全然違ってた(笑)電車を強調した内容ではなく、とはいえ電車を通過する音と風・時刻ダイヤ・車内など、ならではのモチーフを効果的に使って物語を構築。軽くミステリというかロジック的なストーリー構成も魅力。
兄弟と兄のヨメと偶然関わってしまったスリ少女の話、外国に旅立つ前の少女と片恋の相手とかつて恋人だった相手と親友の話、別れ話をしている大人の女性と知り合う無垢な少女の話、毎週木曜日のケーキ屋の奥の話、などなど電車に関わる舞台といっても多種多様でその引き出しの広さに感服。
短編連作なのでさっさと本題に入るため世間は狭い的、偶然な出会い的な人間関係が多いですが、物語としては秀逸。ちょっぴりひねった人物設定も著者らしい。
さらっと静謐な雰囲気と間に挟まれるコミカルな展開の絶妙なコンビネーションにはやはり魅了されますよ。描き下ろしの登場人物総出演の描き下ろしも感慨深い。
そういや小田急線てロマンスカーが通る路線なのね。某漫画を読んで一度は乗ってみたい列車なんですがねえ。
尚、作中の毎週木曜日のケーキ屋の奥の話に登場する女子を主人公にした恋愛もの「君曜日」が続シリーズとして発表されています。
中村明日美子
楽園コミックス4巻 / 白泉社
ジャンル:少女・恋愛 / 好み度:★★★★★