アデライトの花 TONO 

名家を舞台にした愛憎群像劇とパンデミックオカルトストーリー。
西欧風文化の国の名家・ハント家が舞台。

未成年の長男は他人のほとんどが動物の姿に見え、自分の母と姉のみ。
家の状況を描く中で登場する、母が哀れみで雇った不潔な女中も獣の姿に見える。
そんな中、父の二番目の妻として南国からアデライトがやってくる。
長男にはアデライトも後に生まれるその息子も人間に見える。
二番目の妻とは言うが、実は家同士で婚約を交わしていた相手で、
当主はそれを破って現在の妻と結婚した経緯がある。アデライトはその事実を知らず
輿入れしてきており、故郷にも帰れないので別棟で二番目の妻として
暮らすことに、というかんじ。そしてアデライトにも息子が生まれる。
しばらくしてアデライトは彼女の病に伏せる。彼女の故郷の風土病で故郷では風邪の
ようなありふれた病ゆえ医者も楽観視していたのだが・・というあたりで話が動く。
当主・当主の妻・母・長男・長女、召使いたち、当主の二番目の妻とその子が織りなす群像劇
であり、ジワジワと病が浸食していく過程が描かれるパンデミックものでもある。
エンタメでないさりげない演出にリアリティのある描写、長男の視点という設定で
登場人物が獣と人に分けられているのが興味深い。その違いの尺度は何なんだろう。
あと病の明確な症状に花を使う設定がうまいなあ。綺麗な花と香りが死に直結してるという。
物語の視点は次々と変わり、各々の心情が描かれていく。
エピソードの1つ1つが、フィクションの世界でありながらとても身近に感じることが
多いのも印象的だった。残酷なことも日常的なことも含めて。
著者いわく物語のヒロインという、召使いの女性の描写がまたリアル。
彼女は異臭で周囲から嫌われていたがその理由もきっちり描いてるのが印象深かった。
1巻のあとがき読んで、ええヒロインなん?とちょっと驚いた。
家の中の一連の出来事の傍観者という立ち位置なのかなあとは思ったけど。

Nemuki+コミックス1~ / 朝日新聞出版
ジャンル:女性・ドラマ /好み度:★★★★★