あげくの果てのカノン 米代恭

Amazon
あげくの果てのカノンをAmazonで見る

高校時代から偏執的に思いを寄せる先輩とバイト先の喫茶店で再会を果たす女性・カノン。世界の英雄で既婚者の先輩との交流に、背徳を感じつつも感極まるカノンは・・。
ヒロインは高校時代からストーカー的に片想いを続けている先輩がいる。相手のすべての情報を記録蒐集し相手の写真や姿を見ては感極まるタイプのストーカー気質というかメンヘラが入っているというか。とはいえ昔ならちょい行き過ぎた建物の影でじっと見つめる内気な少女、もしくは熱狂的な追っかけ的なイメージ。
そんな彼女も卒業後は先輩と会うこともなく、といいつつ先輩がよく通る場所の近くの喫茶店にバイトで入っている。そんな中、ヒロインのバイト先の店にひょっこりと件の先輩がやってくる、というはじまり。
片想いの先輩が実は既婚者であったり、ヒロイン達の暮らす世界は実は異形の生命体に脅かされている状況で先輩はそれを退治する英雄という設定が徐々に明らかになっていく。ト書きの説明でなく、状況描写で読み手に知らしめる構成は実に巧い。
ディストピア?的世界設定なのでSF、相手が既婚者なので不倫ものということだが、不倫ものっぽくは見えない。状況的にはそうなんだけども、一線越えてるわけじゃないからかなあ。
先輩(その同僚もだが)は戦うたびに身体の損傷を受けるが修繕という名の治療で身体は再生するのだがあらゆる嗜好性格が変貌するという弊害があり、どうも先輩がヒロインに接してくる理由は自分の以前と違うか変わらないかの確認みたいなものなのかな?と感じ取れる。一方ヒロインはだめだと思いつつ先輩の思いが止まらない。このヒロインの心情描写がリアルつーか1つ1つ噛みしめるような描写が印象深い。つかヒロインを含め人間描写がいちいち印象に残る描き方なんだよなあ。秀逸。
不協和音というかちぐはぐな印象を受ける展開は興味深く、どう話が続いていくのか気になって仕方がないという。あといい意味で衝撃を受けたり予想を裏切るような展開も多い。そしてじわじわと浸食してくるような印象を受ける話だった。
人間模様も中々にねっとりとして展開もダークでヘビー。だが目が離せない。

米代恭
ビッグコミックス全5巻 / 小学館
ジャンル:青年・SF・ドラマ / 好み度:★★★★☆