死にたがりと雲雀 山中ヒコ

荒れた寺に棲み着き、寺子屋を始める浪人の青年と自堕落な父を持つ健気な長屋の少女を中心とした、江戸の下町を舞台にした人情物語。時代劇、なのだろうが人と人のつながりを主題にした暮らしの物語と言って良いみたい。
お人好しっぽい浪人の寺子屋先生は、実はある理由で死にたがっている。少女自身は快活でまっすぐで同世代の子供達からも頼られている。長屋の空き巣の犯人かと少女と仲間達が先生を調査することから、二人は出会い交流が始まるものの、その犯人が自分のの父かもしれないと思った少女は、侍先生になすりつけようとするというとこから話がはじまる。
著者の作品は、何かしら抱えるものを持つ人物たちのぶつかりや交流の描写がどれも心にじんわりと染みるがこの作品も言うに及ばず。人物描写が秀逸で、お仕着せでない浪花節みたいなものを堪能出来る。
世知辛いというか不憫な設定で主人公たちは幸福をつかめるのか不安になる展開ではあったが、著者らしい落とし込みだったと思う。
あとがきなどを見るとこういう題材はキャッチーじゃない分発表する場が少なくなっているらしい。

山中ヒコ ARIAコミックス全5巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆