古都・奈良を舞台にした鹿の女性と人の男性との婚姻譚。
いや題名そのまんまですが、ほんとにそういう始まりなので。
奈良というと鹿。神の使いともされる神聖な生物たる奈良の鹿は、
実は人にも化けられる、という世界観。
その鹿たちを世話をするのは鹿の会なのだが、
昨今の財政難の折、世話も会の存続も危うくなっている。
とある鹿の娘は、そんな自分たちの境遇を鑑みて、
有名な和菓子屋の三男坊との見合いを行う。主にお金のために。
まあ見合いから始まり二人が紆余曲折の末結ばれる話。
奈良の鹿の現状はたぶんリアルなのだろう。
いろいろとツッコミ所満載ながら当人達は真剣と
いう構図のアンバランスの妙が巧い。
鹿以外にも狸や猿など神獣が登場してんやわんやの大騒ぎ。
鹿娘の淡々さと三男坊のいい意味でお坊ちゃんなところが良い。
鹿の一族の女性陣が完全な人でなく鹿が二足歩行したかんじの
半人状態の絵面が自然体。
あと奈良という舞台からか、鹿の女性陣たちの様々な着物姿を堪能出来る
のが個人的にツボだった。
奈良と鹿についてのコラムもある。このあたりはリアル事情なんだろう。
同時収録は不思議なキャラによる異色のグルメ漫画の魔女の台所。
緒方波子
ビームコミックス全1巻 / 講談社
ジャンル:青年・コメディ / 好み度:★★★☆☆