セシリア・ドアーズ 江ノ本瞳

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目から空気感染し死に至る不治の病「染視病」が流行し、新興宗教、エゴ、犯罪が横行している荒廃した近未来。少女・響は、不思議な少年・海と出会う。彼は生体コンピュータであり、自分に欠けている「WET」を探しているという。WETを探しに街をさまよう海と響が見たものとは......。
作者の作品には毒の入ったコメディ系と、とことんシリアスで考えさせられる系に分かれますが、こちらは後者です。かなり重いテーマが語られている問題作。とにかく内容の濃く、読んだ後も心に残る作品です。近未来SFな設定ですが、現実社会でも見られる矛盾や歪みをテーマに上手く取り込んでいます。構成も設定もかなり緻密で高い質を保っています。展開も作者の他のシリアス作品に比べて、読みやすいというか引き込まれるものがあります。死者に会う為の音律、染視病の特効薬プロデュースと小道具?も冴えています。ともすれば絶望しかない状況下でそれでも生きていく登場人物たちの描写が胸を打ちます。救いようのないエピソードは見ていてつらいものがありますが後味が悪くありません。特につらいことに対しての涙が表現されていないところが印象深かったですね。
好き嫌いはおいておいて、ぜひ一度読んでみて欲しい作品です。

江ノ本瞳
ウイングスコミックス/全2巻/新書館
ジャンル:未来・ヒューマンドラマ/好み度:★★★★★