恐ろし語り 楠桂

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修羅御寮・座敷童異聞・神かくしその後・半神・川姫・神の庭・妖の家・姉妹闇語り。人と魔と妖を描いた本格正統派ホラー8編を収録した短編集。妖や言い伝えといった民俗学的な話もあれば人の悲しい業を描写した話もありその守備範囲の広さはやはりすごいなと。昔はこういう短編ホラーをたくさん発表した著者だけにやはり読み応えがあります。
「修羅御寮」
それはとある北国の話。望まぬ結婚を強いられ身内を傷つけ恋しい相手を探している花嫁の魂と彼女を見る一人の男の話。悲しくも物語の全容がひっくりかえるというミステリ構成も秀逸。
「座敷童異聞」
夫と息子がいる女性の母親が家からいなくなった。祖母も母も家から出ず座敷童の世話をしていたという。そんな折息子がある小さな子を見つけ・・・。螺旋っぽい静かで後にがっとくる背筋凍る系ホラー。
「神かくしその後」
その土地に伝わる神隠しの禁忌の言葉。外から来た少女は同級生の忠告にかえって依怙地になりその禁句を発してしまう。昔からの言い伝えをおろそかにした後に待つものは。因果応報ホラーというべきか。
「半神」
優しい姉が娘とともに里に帰ってきた。病んだ心を抱えた姉は娘を夫と半分ずつにするという。優しい母、母を慕う幼い娘は幸せだと告げる。
「川姫」
川にすむ妖の姫に魅入られた青年の話。美しく悲しく残酷な姫と青年の結末は。本編はいい話ですが、青年の友人の貧乏くじっぷりが憐れすぎる。淡々と川姫について語る村人の笑みが薄ら寒くて雰囲気が出てるなあ。
「神の庭」
大事なものは神様の領域に埋めるといい。失うことはないがそれは心の狭い神様のものになる。シングルマザーとその幼い息子と神様の話。どんでんがえし系のホラー。
「妖の家」
いわくつきの家に引っ越してきた一家。人間以外の気配のするその家で、動けない祖母がありえない行動に出る。西洋エクソシストのような派手な立ち回りと日本の昔話のような穏やかなオチが絶妙。
「姉妹闇語り」
瓜二つの美人姉妹と一人の青年の物語。ある意味一番怖かった・・。この手の話では男は愚かで浅はかとしかいいようのないキャラばっかやね。そうでないと話にならんのですが。

楠桂
コミック怪全1巻 / 角川書店
ジャンル:ホラー・青年 / 好み度:★★★★☆