北海道小樽市で暮らすシュウジとちせ。ちせの度胸試しの告白から2人はぎこちなく交際を始める。そんな中、札幌が空襲を受け、逃げるシュウジが見たものは鋼の羽根を生やし敵を攻撃する兵器となったちせだった。
謎の敵により世界は戦争状態の状況下で綴られる、生体兵器となったヒロインのちせと彼女の彼氏であるシュウジを中心とした恋愛と人間ドラマ。
戦争と兵器という要素はあれど、SFではなくどこまでもどこまでも「人間」の物語。思春期の純粋な心情の吐露は宝石の輝きのごとく。青臭い思考も陳腐な台詞も戦争下という切迫した状況ではそれらすべてが心に染み渡ります。
有事の際でも恋愛を重視するちせの心情、ちせを連れ出すシュウジの心情が特に印象的でした。
そして「死」に対する恐れとその恐れに折り合いをつける人間描写が強烈な印象とともに共感。戦争でも事故でも寿命でも等しくやってくるそれに対する恐れは常に持つ人間なので。
あとちせの生身の体に鋼など無機物が構築されるという設定にインパクトを感じました。
終末を描く作品は数あれど、世界と自分たちを等価する価値観の視点で描かれるがゆえ最もリアリティがあるタイトルだと感じました。
高橋しん
最終兵器彼女 /ビッグスピリッツコミックス全7巻 / 小学館
最終兵器彼女外伝集 世界の果てには君と二人で /ビッグスピリッツコミックス全1巻 / 小学館
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆